代表理事メッセージMessage from Representative Director
私たちは、様々な地域に眠っている素材や構法を再編集・新開発することで、
その地域に仕事をもたらすことを目的としています。
私たちが手にしたモノは何だろう。
私たちが失なったモノは何だろう。
19世紀は、その機械の力を大きく、強くし、世界中に広げていった。
20世紀の前半には、その機械の力で、世界中を幸せにできるとみんなが夢を見た。
20世紀の半ばには、その機械を動かすためのエネルギーの奪い合いが始まり、何百万人もの人々が亡くなった。
20世紀後半には、人の力と機械の力が逆転した中、情報という見えない力が急速に伸びていった。その情報のスピードの早さと力の巨大さに私たちは戸惑ってしまった。そして、モノを生み出すための元となる素材や愛情の力を忘れかけてしまった。
21世紀の前半には、個性のない同じような場所がたくさん生まれた。機械を動かすためのエネルギーを使うことで、すべての生命の源となる地球が汚れてしまった。
力を持つものと持たないものの格差が18世紀前以上に広がったことに気づいてしまった。
私たちに必要なものは、「バランス」なのだ。
すべてのモノやコトが片寄っては存在し得ないように。
地球が太陽との絶妙な距離のバランスで存在しているように。
再度、素材や愛情を身近かに引き寄せ、どのようなバランスで維持するかを考え直そう。その中で、必要なモノと必要でないモノ、そして、新しく付け加えるモノを見直そう。
日本は素材と愛情、そして自然とうまくバランスを取りながら生きてきたから。
そして、そのバランス感覚を保つために、先人たちは「知恵」を生み出した。
南北に3000kmと長い日本だからこそ、四季がハッキリとした日本だからこそ知恵は発達した。
四方ともに海に囲まれている極東の島だからこそ、知恵は昇華されてきた。
それは、日本の大事な宝の一つなのだ。
2011年3・11の出来事は、私たちが立ち止まり、私たちのことを真剣に考える機会となった。何故なら、失ったモノがあまりにも大きく、多いからだ。
しかし、失ったモノ以上に多くの良さも発見した。
人と人とのつながりや愛情こそが生きる力となることを、前に進むための夢を持つことが私たちを元気にするということを。
今私たちは、再スタートのターニングポイントに立ったのだ。
先人たちがこれまでに培ったバランスや知恵や素材や愛情を見直そう。
新しく発展してきた見えない情報の力を私たちの新しいツールとして使いこなそう。
そこに、次の時代の匂いを感じるはずだ。
それは、難しいことではないはずだ。
あなたの身の回りにあるモノを新しい視点で見つめることだから。
すべてに、個性があると認めてしまえば良いのだ。
道端に咲く野の花に美しさが宿るように、手を引くその幼子に無限の可能性があるように、塩水を被った土にさえ役割があるように。
捨てられているゴミは、何故、捨てられているのだろう。
その源となっている素材はダメになったのだろうか?
人々が決めた使い方を終えただけなのに。
それは、その素材にとっては、ほんの一部分であるはずなのに。
バランスを保ち、知恵を持って、私たちが手にしたモノを見直そう。
バランスを保ち、知恵を持って、私たちが失なったモノを見直そう。
一般社団法人 地域素材利活用協会(チソカツ)代表理事 山下保博
–>